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セゾンビールについて、つらつらと思うこと

現在、マザマの「セゾン・デートル」開栓中です。マザマ醸造所は、結構ベルギー風のビールを造るのが上手で、このセゾンも「まさにセゾン」という味を体現している、素晴らしいセゾンビールだと思います(「デュポン」の方に近いセゾンですね)。

現在発売中のヤッホー「僕ビール、君ビール」を筆頭に、「ポストIPA」のひとつとして「セゾン」スタイルが注目されています。この「セゾン」とは一体何なのでしょうか? つらつらと書いてみます(長文)。

最も狭い定義をすれば、「ベルギー南部発祥の古典的エール」となるでしょう。

ベルギー南部のフランス語圏(ワロン地方)の穀倉地帯で(エノー州が発祥地と言われています)、農民が夏の農作業時に飲むために農閑期(冬季)に仕込んでいた、とされるビールです。セゾン(仏語の「季節」=season)とは「夏」のことを指します。

ベルギーも7〜9月は暑く、とくにワロン地方は秋口まで暑い日が続きます。水代わりに飲むとすれば、あまりアルコール度数の高いビールは向きません。かと いってアルコールを弱めると夏まで貯蔵しておく間に傷んでしまいます。そこで、アルコール度数を5〜7%に抑える一方で、大量にスパイスを加えて傷みにく いビールに仕上げる工夫をしました。糖化工程でも乳酸菌を取り込んで、酸味の効いた爽やかな飲み口にする工夫も施しています。乳酸菌はまた、ビールを悪くしない防腐効果もあります。

農繁期には他の地域からの季節労働者を受け入れるために、労働条件の1つとして、「ビールの提供」という項目があったといいます。労働者を集めるために、 「うちは、ビールを1日何リットル」、別の農家が「うちは何リットル」というように競い、エスカレートしていき、ベルギーのシリー醸造所では、一人1日8 リットルのビールを提供していたという記録も残っているそうです。

色は白濁した麦色からアンバーまで、ホップも苦味が強いのもあれば弱いのもある、度数も5%から7%以上のものもある…と、実は「なんでもあり」なのがセ ゾンの特徴です。それは、たとえば日本の味噌と同じように、農家の家ごとのスタイルがあったためです。「あそこんちのビールはうまいぞ」ということで農家からビール会社になったセゾンの醸造元もあります。

それだけに、「セゾン」というのはとても取り留めのないスタイルです。最近のセゾンは、スパイスを使っていないものも散見されます。「ベルジャン酵母を 使ったライトエール」としか言いようのないセゾンが商品として存在しています。自分として「よいセゾン」というのは、「酵母感」と「スパイス感」(それとできれば「軽い酸味」)が重要だと思っているので、「スッキリとした飲みやすさ」というのがあまり前に出てくれてない方がうれしいです。しかし、この懐の深さ(あるいは曖昧さ)というのがセゾンの醍醐味でもあるので、あまりうるさいことを言わずにのんびりと楽しむのが、セゾンの美味しい飲み方なのかもしれ ません。

しかし、それでもあえて細かいことを言うと(笑)、セゾンビールは「その家らしさ」というのが大事ではないかと思うことがあります。日本のセゾンですが、 酒米と自家栽培ホップを使った「志賀高原・山伏」や、酒麹を使った「常陸野ネスト・セゾン・ド・ジャポン」というのがあります。それぞれ酒蔵資本のブルワリーが造っているのですが、これらは、セゾンの成立過程までをも味に含めることができている、素晴らしいセゾンビールだと思います。

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