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白老のホステル「haku」へ行ってきました

2019年5月の10連休は、初日26日の「紅桜蒸留所1周年記念パーティ」の他に、最終日2日間にお休みをいただきました。

先月4月にオープンしたばかりの白老のホステル「haku」へ行くためでした。

https://hakuhostel.com/

 

 

実はこのホステルのロゴ作成と内装を、当Maltheadsと同じデザイナーの方が手がけています。(※経営するオーナーとは別の方です

 

その方は数年前に札幌から白老へ移住したのですが、「白老に新しいゲストハウスができた」という情報を知り調べてみると、どうにも同じ空気感が。直接メールで訊いてみたところ、やはりビンゴでした。

 

しかも、なんと7タップのビアバーも併設! ここまで縁があっては行かない理由がありません。

 

 

 

この日は、「鬼伝説」(登別・ほぼ地元)、「ノースアイランド」(江別)、「忽布古丹」(上富良野)の3ブルワリーのビールが繋がっていました。鬼伝説の「金鬼ペールエール」が一番のオススメだそうです(さすが)。「金鬼」以外の6タップは、樽ごとに入れ替えです。


 

ホステルのフロント。この寄木の作り方、当店のカウンターと同じです。10年前に廃業した旅館をリノベーションしていて、このカウンター自体も廃材を使っています。よく見ると扉の取っ手が見えます。

 

デザイナーご本人とは、仕事で白老に不在だったため残念ながら会えませんでしたが、ホステル含めて白老を充分に楽しんできました。

 

白老に滞在・観光するのは初めての機会だったのですが、行ってみるととても良い雰囲気。この土地が、縄文時代〜アイヌ時代と定住の歴史が道内でも特に長い場所であることを肌で感じてきました。

 

現在は、なにか有名な観光地があるわけではありません。というのも、昨年「アイヌ民族博物館」を閉館し、国立の民族博物館「民族共生象徴空間 《ウポポイ》」を建設している真っ最中だからです。来年2020年4月の開館を目指しています。

 

 

街自体もその「準備」をしているような空気感。でもそれは「まだなにもやってない」空気なのではなくて、来年に備えて力を蓄えているような感じです。ノンビリと旅をしたい方は、むしろぜひ今のうちに一度訪れてみてください。現地はレンタサイクルがおすすめです。ポロト湖を一周するだけでも気持ちが良いです。

 

「haku」自体も「ワーク・イン・プログレス」という段階です。泊まった個室の壁は、アーティストにペインティングをするらしく「準備中」という状態。これから部屋の予約状況と画家さん双方のタイミングを見て描いてもらうのだそうです。

 

 ここに何が描かれるのかも楽しみです

 

来年の国立博物館開館時にはおそらく大きな話題になる土地なので、その前にこの雰囲気を楽しんでみてください。

JR駅からもすぐ近くなので、自動車のない方も、飲酒運転が気になるドライバーも行きやすいところです。

 

 

ビアバー兼カフェは、週一日程度のお休みがあるようですので、事前のチェックをしてください。

また、フードメニューは「これから」の課題だそうですが、燻製を中心とした簡単なおつまみがあります。

 

 

最後に。

こちらはいわゆる「ゲストハウス」(簡易宿泊施設)です。宿泊客自身の利用の仕方次第で、快適さが大きく左右されます。

アメニティなどは最小限(有料ならばあり)ですし、部屋内での飲食は禁止です(ラウンジおよびバーを使いましょう)。

あらゆる宿に高級ホテルのような「至れり尽くせりのサービス」を求める方はお気を付けくださいませ。

もちろん「スタッフのサービスが悪い」という意味ではまったくありません。とても居心地のよい宿で、ゆっくりと休めました。

 

 

haku  hostel + cafe bar

住所:北海道白老郡白老町大町3-1-7

TEL:0144-84-5633

https://hakuhostel.com/

「LAT43」と北緯43度線について

明日9日(土)11時45分からの乾杯セレモニーで飲める「LAT43」。読み方は「エルエーティ・フォースリー」です。

札幌市清田区発足20周年を記念し、当店が監修し、月と太陽BREWING が醸造しました。

 

 

なぜそんな名前なのか? LATとは? どうして43? といろいろ不思議が浮かぶと思いますが、名前にはいろいろな意味合いを込めています。その自註自解を綴ります。

 

■LATとは?

latitude つまり「緯度」のことで、その一般的な略し方が「LAT」です。
「43」は43度線。もちろん北緯(North Latitude)です。

北緯43度といえば、札幌を象徴する緯度線です。「ミュンヘン・サッポロ・ミルウォーキー」という昭和38年のサッポロビールの名コピーも、この緯度線にちなんだものです。ミュンヘンは48度、札幌・ミルウォーキーは43度。ずれている分だけ「45度付近にビールの名産地がある」という説明をしていました。ところがその半世紀後に、オレゴン州ポートランドが「世界のビールの首都」と呼ばれるようになるまでクラフトビールが発展しますが、ポートランドはまさに北緯45度に位置しています。先見の明ですね。

 

その北緯43度線は札幌市民も馴染みがありますが、では実際に札幌市内のどのあたりを走っているのかを認識している方は少ないと思います。市内を横切っているのは、平岡公園から羊ヶ丘展望台を通り真駒内公園を抜けていくあたりです。札幌市民としては「意外と南側」という感覚のあたりです。

千歳空港まで車で行かれる方でしたら、「高速道路に書いてあったな」と覚えているかもしれません。札幌南インターチェンジのすぐ南側にその看板があります。

 

そして実は、清田区役所に北緯43度が走っています。

 


 https://pos-map.appspot.com/jp/coordinates60.html?lat=43.0000&lng=141.4431&scale=18

 

このことは3年前に偶然知りました。平岡にある妻の実家のすぐ裏側にも43度線が走っていることがわかり、なにもないところで記念撮影もしました(笑)。

それで思ったのは「なぜ区役所はそのことを広報しないのだろう?」ということでした。区役所には図書館がありよく通っていたのですが、そういうことを説明しているもの(パネルなり43度線に合わせて引いたテープなり)をまったく見たことがなかったのです。


■ビールのコンセプト

今回の企画を提案されたとき(なぜMaltheadsにこの企画が来たのかの経緯はこちら)、実はビールのコンセプトは瞬間的に浮かびました。
つまり、「北緯43度にちなんだ4.3%のセッションビール」というコンセプトです。

 

清田区側には二つの説明をしなければなりません。ひとつは「セッションビール」の説明。これはいつも店でもやっているので難しくありません。むしろもう一つの方、「清田区役所に北緯43度線が通っている」ことを説明するのに骨が折れるだろうと考えていました。説明しても「そうなんですね。でもビールとは関係ないですよね」という冷たい反応で終わることもあり得ると心配していました。

 

ところが、それは幸いにも杞憂でした。今回、清田区側の担当だった広報課の岩田さんは、そのことをちゃんと知っていたのです。

 

それどころか「なぜ清田区役所でそれを広報していないのか」という理由をおしえていただきました。区役所の開設後に「測地系の変更」ということがあり、区役所の開設当初はもう少し北にあった43度線が南にずれて敷地内を走ることになった、ということだったのです。

岩田さんのまとめた記事がこちらです。

 

 北緯43度線のお話(「清田区20周年記念ビール」サイトより)
 http://www.city.sapporo.jp/kiyota/20th/craftbeer/column01.html


「その土地ならではの特徴にちなんだ地ビール」というコンセプトが正確に伝わり、ほとんど阿吽の呼吸でコンセプトは決定しました。

 

■「LAT43」のネーミングとコンセプトの連関

あとはネーミングです。これもそれほど考えることなく、自然と「LAT43」という名前が浮かびました。

 

・ドリームズ・カム・トゥルーの曲に「LAT 43゜N 〜forty-three degrees north latitude〜」がある。アラフィフ世代ならピンとくる。

 

・英文字3文字 + 数字は、アイドルグループの命名の定番で、テレビを見ていれば年配の方も無理なく読める。
・「4.3」にしてしまうと「フォー・ポイント・スリー」と読みづらくなるので「43」としたが、読み方はどちらにでもとれるように「フォー・スリー」とした。
・お披露目される「きよたマルシェ」は、老若男女が幅広く集まるお祭り。誰にでも親しみやすい味にする。
・アルコール度数が低いのは、「セッションビール」というクラフトビール界の流行を捉えていることと、どの世代の人でも無理なく飲める度数であること。
・色合いは薄いゴールド。一般的なライトラガービールと同じ色合い。見た目では「いつものビール」と変わらない。
・ホップはアメリカンホップの香りを前に出す。「クラフトビールらしさ」を出すと同時に、「いつものビール」との違いをはっきりと感じてもらう。

 

…と、ざっとこんな感じです。もちろん後付けの理由もありますが、ほとんどすべてが瞬間的に結びついて浮かびました。

 

コンセプトがハマるとスペックも自然と決まっていく。

コンセプトに振り回されてしまって味が散漫になる、という不幸な場合もありますが、今回の「LAT43」はすべてが良い方向に自然と収束していったと思っています。その過程には、とても気持ちの良い感覚がありました。

 

 

当日は、43度線のところ(メインステージのすぐ裏手)に実際に線を引いてくれるそうです。43度線を踏みながら、「LAT43」を味わってください!


「LAT43」のお披露目は9月9日(土)11:45から。
Maltheads および 月と太陽BREWING での提供は、10日(日)からです。

 https://maltheads.net/info/1710359

 

ウイスキーと私

今日はお店休んで、「ウイスキー検定」最後の追い込みをしています。

 

『モルトウイスキー大全』1995年初版巻末についていた「モルトマスターのための練習問題集」で勉強しています。引っ張り出して思い出したのですが、実はこの問題集こそがMaltheadsの原点なのです。

 

 

20年前の1997年のこと。当時住んでいた東京(実家でもあります)で兄の紹介からバーに通うになり、シングルモルトにハマりました。その行きつけのバーで薦めてもらって知ったのがこの『モルトウイスキー大全』です。マスターは当時から著者の土屋守氏とも絡んでいる人でした。実際にウイスキーを味わいながら細かい話も聞き、そして貪るようにこの本を読みました。

 

巻末に、写真の「練習問題」があります。今からして思えば、土屋氏は当時から「ウイスキー検定」のようなことをやりたかったのでしょうね。しかしその後の改訂版からは掲載がないので、初版から読んでいる方しかご存知ない貴重な資料かもしれません。

 

末尾にも書いてありますが、なんとこれには「解答編」がありません。その分、全部解きたい一心で相当に本編を読み込むことができました。それでさらにウイスキーに興味が湧きます。

 

 

あるときマスターに「ウイスキーにもソムリエみたいな資格はあるんですか?」と訊いてみたところ、「ウイスキーでそういう資格はないのですが(*)、ビールにはあるようですよ」、と教えてもらい、ビアテイスターの存在を知りました。
(*「スコッチ文化研究所」や「ウイスキーコニサー」ができるのはその後21世紀になってからです)

 

「ビールか。同じ麦のお酒だしね〜」と興味をもって調べてみると、自宅の沿線にビールの専門店がありました。それがいまや「ビアバーの聖地」と言われる両国のポパイでした。(以後の経緯は述べるまでもないでしょう)

 

 

改めて解いてみる「練習問題」は、20年以上前の内容なので時代を感じましたが(ときには現在の定説と違うことも)、今でも案外とスラスラ解けたのには自分でも驚きました。

 

でも今回は1級合格は難しそう(笑)。あと1年頑張れば、日本ビール検定と合わせて「ダブル1級」行けるかもしれません。

 

 

この仕事を始めてからはビールばかりでウイスキーから離れてしまったので、Maltheadsでウイスキーを出していることを「片手間」だと思っている方も多いとは思います。しかしそんなわけで、実は店主の原点はウイスキーの方にあるのです。

 

 

 

清田区20周年ビール「LAT43」の発酵具合

月と太陽ブルーイングとの共同制作、清田区20周年ビール「LAT43」の発酵具合を見てきました。
http://www.city.sapporo.jp/kiyota/20th/craftbeer.html

 

糖化〜酵母投入までの「仕込み」は何度も経験がありましたが、今回のように発酵の管理まで踏み込んで見たのは実は初めてで、大変勉強になりました。
滝川クラフト工房のビールの仕入れもしてきましたので、話を聞きたい方はぜひ。

 

次の休みは25日(火)です。

 

 

 

ハロウィンなので、パンプキンとカボチャについて

ハロウィンです。

「ニセコ・パンプキンエール」をどうぞ。

http://maltheads.jugem.jp/?eid=401

 

 

「パンプキンエール」には、ほとんどの場合シナモンが使われています。あれがなぜかと言えば、「パンプキン」のエールなのではなくて、アメリカ人の郷愁を誘う「パンプキンパイ」をエールにしたものだからだそうなのです。ベジタブルビールというよりは、スイーツビールというわけですね。

 

上のニセコ・パンプキンにもシナモンが使われています。しかし、熟成してしまった分だけ香りが引っ込んでしまっています。お店ではシナモンパウダーを用意していますので、少々振りかけてください。味わいが増します。

 

 

さて、「パンプキン」と「カボチャ」は同じものではない、ということに薄々気づいている方も多いと思います。しかし、具体的にどう違うかは、なかなか説明できないものです。2年前の記事ですが「NIKKEI STYLE」のわかりやすい記事を見つけました。
http://style.nikkei.com/article/DGXNASFK2800B_Q3A930C1000000?channel=DF260120166493&style=1

 

やはり品種が違うのですね。われわれがいつも食べている「カボチャ」は西洋カボチャということになります。


日本版の「(西洋)かぼちゃエール」ができないかなぁ、と前々から思っています(もうすでにあるのかもしれませんが)。甘みがあって、出汁のうまみが隠し味のビール。ブラウンエールかポーターくらいで造ればちょうどいいのでしょうか。もちろん発売時期は、ハロウィンではなくて冬至です。

 

この記事によれば道産の「ストライプペポ」という品種があるそうです。果肉部分の処理に困っているそうですが、それこそ「パンプキンエール」に使えばいいのに、とも思いました。

 

 

[追悼] 小田会長の思い出

クラフトビア・アソシエーション(日本地ビール協会)の小田良司会長が亡くなられました。

 

http://www.beertaster.org/cba0815.html

 

2007年のちょうど今時期、マイケル・ジャクソンが亡くなったときを思い出すほど、驚きをもって報せを聞きました。ジャクソン氏は神様のような存在でしたが、会長はまさに恩人であり「師匠」でもありました。悲しくてなりません。

 

モルトウイスキーからビールに興味を持ち、夫婦二人でビアテイスターを取ったのが1998年。そのころ夫婦でビアテイスターはまだ珍しかったためでしょうか、いろいろ可愛がっていただいたように思います。

 

 

​ 会長からサインを頂いた『ビアコンパニオン』。読みすぎてボロボロです。

 

ジャッジの勉強をし始めたころ。デュッセルドルフ・アルトのジャッジングをやったとき。オフフレーバーなどとくに問題は感じずに高めの得点を付けたところ、いっしょに採点していた会長は低評価でした。なんでですか?と訊くと「現地のアルトはこんなんやない。もっと瑞々しいんや」と仰る。「その"瑞々しさ"はどうやって判断すればいいんですか?」と重ねて訊くと「それは現地に行って飲むしかないなぁ…」と。

 

んなアホな!?とそのときは半ば憤ったものです。しかしその後、現地のアルトを飲む機会がやってきました。飲むと、会長がおっしゃったとおり、本当に「瑞々しい」のです。字面や言葉では伝えきれない味はあるのです。それを身に着けるためには経験こそが大事なんだ、と強く痛感しました。

しかし、時間にもお金にも限りがあります。経験や感覚を身に着けることはとても難しいものです。それを補ってくれるのが「知識」なのです。だからこそ、自分は今でも「勉強」し続けています。そのキッカケのひとつは、会長とのこのやり取りにありました。

 

 

 

写真のマイケル・ジャクソンの『ビア・コンパニオン』。これにライプチヒ・ゴーゼの章があります。ゴーゼといえば塩を使ったビールで、本を買ったころはまだまだ未知のスタイル。この本を翻訳をした会長も、体験せずに訳さざるを得なかった、と告白していました。「ゴーゼはまだ日本で飲んだことある人間はほとんどおらん。坂巻さん、ライプチヒに行って来てレポートしてや?(笑)」と冗談を言われたものです。

 

時は過ぎ、数年前から少量ながらも輸入されるようになり、アメリカのクラフトビールの人たちが造ったものも入って来るようになりました。ヤッホーブルーイングも「好みなんて聞いてないぜSorry」シリーズで醸造もしました。ゴーゼが日本にいながらにして口にできるようになったことには、当時を思うと非常に感慨深いものがあります。

 

 


日本地ビール協会は、いわゆる「地ビール解禁」の1994年発足でした。アメリカのビール審査メソッドを日本に取り入れたものが「ビア・テイスター」です。

15年前の「地ビールブーム」が終焉すると、「マイクロブルワリーの暗黒時代」を迎えます。協会も大きな曲がり角に立たされたそうですが、会長が私財を投げ打って協会を存続された、と伺っています。その大きな熱意には心打たれました。

大会社に属さない一般の方にもビール官能評価の習得の機会を作り、ビアスタイルの重要性を確立させました。 「ビアフェス」という言葉を広め定着させたのも、会長のおかげです。日本のビール史において、非常に重要なことを成し遂げた方でした。

 

 

お店をオープンしてから、何度か電話でやり取りしたことはありましたが、結局、会長に店内をお見せすることは叶いませんでした。それが残念でなりません。

 

会長、本当にありがとうございました。これからも日本のビールの発展を見守っていてください。

 

セゾンビールについて、つらつらと思うこと

現在、マザマの「セゾン・デートル」開栓中です。マザマ醸造所は、結構ベルギー風のビールを造るのが上手で、このセゾンも「まさにセゾン」という味を体現している、素晴らしいセゾンビールだと思います(「デュポン」の方に近いセゾンですね)。

現在発売中のヤッホー「僕ビール、君ビール」を筆頭に、「ポストIPA」のひとつとして「セゾン」スタイルが注目されています。この「セゾン」とは一体何なのでしょうか? つらつらと書いてみます(長文)。

最も狭い定義をすれば、「ベルギー南部発祥の古典的エール」となるでしょう。

ベルギー南部のフランス語圏(ワロン地方)の穀倉地帯で(エノー州が発祥地と言われています)、農民が夏の農作業時に飲むために農閑期(冬季)に仕込んでいた、とされるビールです。セゾン(仏語の「季節」=season)とは「夏」のことを指します。

ベルギーも7〜9月は暑く、とくにワロン地方は秋口まで暑い日が続きます。水代わりに飲むとすれば、あまりアルコール度数の高いビールは向きません。かと いってアルコールを弱めると夏まで貯蔵しておく間に傷んでしまいます。そこで、アルコール度数を5〜7%に抑える一方で、大量にスパイスを加えて傷みにく いビールに仕上げる工夫をしました。糖化工程でも乳酸菌を取り込んで、酸味の効いた爽やかな飲み口にする工夫も施しています。乳酸菌はまた、ビールを悪くしない防腐効果もあります。

農繁期には他の地域からの季節労働者を受け入れるために、労働条件の1つとして、「ビールの提供」という項目があったといいます。労働者を集めるために、 「うちは、ビールを1日何リットル」、別の農家が「うちは何リットル」というように競い、エスカレートしていき、ベルギーのシリー醸造所では、一人1日8 リットルのビールを提供していたという記録も残っているそうです。

色は白濁した麦色からアンバーまで、ホップも苦味が強いのもあれば弱いのもある、度数も5%から7%以上のものもある…と、実は「なんでもあり」なのがセ ゾンの特徴です。それは、たとえば日本の味噌と同じように、農家の家ごとのスタイルがあったためです。「あそこんちのビールはうまいぞ」ということで農家からビール会社になったセゾンの醸造元もあります。

それだけに、「セゾン」というのはとても取り留めのないスタイルです。最近のセゾンは、スパイスを使っていないものも散見されます。「ベルジャン酵母を 使ったライトエール」としか言いようのないセゾンが商品として存在しています。自分として「よいセゾン」というのは、「酵母感」と「スパイス感」(それとできれば「軽い酸味」)が重要だと思っているので、「スッキリとした飲みやすさ」というのがあまり前に出てくれてない方がうれしいです。しかし、この懐の深さ(あるいは曖昧さ)というのがセゾンの醍醐味でもあるので、あまりうるさいことを言わずにのんびりと楽しむのが、セゾンの美味しい飲み方なのかもしれ ません。

しかし、それでもあえて細かいことを言うと(笑)、セゾンビールは「その家らしさ」というのが大事ではないかと思うことがあります。日本のセゾンですが、 酒米と自家栽培ホップを使った「志賀高原・山伏」や、酒麹を使った「常陸野ネスト・セゾン・ド・ジャポン」というのがあります。それぞれ酒蔵資本のブルワリーが造っているのですが、これらは、セゾンの成立過程までをも味に含めることができている、素晴らしいセゾンビールだと思います。

今日はインターナショナル・ウイスキーデイ

今日はマイケル・ジャクソンの誕生日を記念した「インターナショナル・ウイスキーデイ」だそうです。
http://www.internationalwhiskyday.org/



逝去してもう7年。御大も生きていればまだ73歳。やはり早い死だったなぁ、と思います。
自分にとってマイケル先生はウイスキーというよりもビールの人という印象がありますので、なんかビールが省かれているのは癪なのですが(笑)。
この方なくしては、CAMRAの拡大もなかったろうし、今日のクラフトビールの隆盛もまた違ったものとなったことでしょう。晩年はかなり日本にも来ていて、勃興期の地ビールにとても興味を示していました。

以前にもネタにしたのですが、都合2度ほどお会いしたことがあります。2度ともみごとに酔っぱらっていらっしゃいました(笑)。

 

わが心イギリスにあり

ちまちまと貯めていたら、イギリスビールが久々に揃っていたので記念撮影。



「どのビールが一番好きですか?」と無茶な(笑)質問をよくされますが、銘柄でなく国で答えるなら、間違いなくイギリスです。
昨今のアメリカビールの隆盛で、いっそう日陰者になっているイギリスビール。しかしいまの「クラフトビール」ブームの源流は、1970年代初頭にロンドンから沸き起こったリアルエールの保存運動「CAMRA」にあります。伝統的なビールを大事にしよう、と言う思いがアメリカにも渡り、さらに大きな潮流となったのです。

イギリスのホップ(ファグルやゴールディングスなど)は、「草のような香り」と形容され、穏やかですが主張はあり、いつまでも飲み続けられる品の良さも持っています。しかし、そういうホップの良さが際立つイギリスの低アルコールビールは、残念ながら劣化がしやすく、日本ではなかなか良い状態で飲めまぜん。そのためにファンも増えないという負のスパイラル状態に陥っています。その良さをなかなか伝えられない現状は、イギリスビール好きとして大変歯がゆいものがあります。日本の造り手も、もっとブリティッシュホップを使ったものを増やしてほしいものですけどね。

さて、勘のいい方ならばひとつだけ仲間外れがいるのにお気づきでしょうが、もちろん理由はあります。ベルギーの名品「デュヴェル」の酵母は、スコッチエール「マッキュワン」から譲り受けたものだ、と言う有名な逸話があります。マッキュワン、久々の入荷です。
 

◆拡張版 なんか目に留まった【ビール】ニュース 2015/01/28

・札幌市へ「ビールで乾杯」条例を大手4社が要望

http://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20150126/4929221.html (ニュース動画あり)
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/donai/588477.html (道新)
※どちらも何日かで削除されると思います。


「札幌を日本のビールの首都に」(http://maltheads.net/photo/album/217058)を提案している立場として、この日本初のビール乾杯条例は大歓迎です。

しかしとてもモヤッとするのは、NHKのニュース動画やネットの書き込みなどを見ていても、だれもがいまブーム(笑)の「クラフトビール」と結びつけようとしない ところです。両者はまったく別の文化である、という風にしか認識できないのであれば、この乾杯条例も今のクラフトビールブームも、短い命ですね。どちらの 人もそれでいいとは思っていないはずなのに。


ところで、「乾杯条例」については恥ずかしながら寡聞にして知らなかったのですが「ブーム」だったんですね。軽く検索してみて、ここが背景や問題点などがよくまとめられていました。
http://www.nippon.com/ja/column/g00147/

罰則がないとはいえ法律なのですから、強制感を煽ってしまう短所は気になります。一方で今回のビール条例は、大手4社がひとつの「ビール文化」を作ろうと協働しているところが歓迎できます。

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